「ソウ」シリーズの脚本家リー・ワネルが手がけたサイコスリラー作品「透明人間」。原作となったH.G.ウェルズの「透明人間」はこれまでに数多く映画化されていますが、これまでで最高の出来であると話題となりました。
当記事では
- 「透明人間」作品情報
- 「透明人間」ネタバレあらすじ
- 「透明人間」犯人とラストの考察
これらについてご紹介いたします。
なお当記事には、映画「透明人間」のネタバレ内容と結末が含まれます。作品をまだご覧になっていない方、結末を知りたくない方はご注意ください
contents
【透明人間】作品情報
【公開年】2020年
【監督】リー・ワネル
【出演】エリザベス・モス、オルディス・ホッジ、ストーム・リード、ハリエット・ダイアー、マイケル・ドーマン、オリヴァー・ジャクソン=コーエン ほか
【制作国】アメリカ・オーストラリア
【上映時間】124分
【配信元】ユニバーサル・ピクチャーズ/東宝東和
H.G.ウェルズの小説「透明人間」を原作としたスリラー作品。1933年に公開された映画「透明人間」のリブート版。
メガフォンをとったのは、「世界でもっとも成功したホラーシリーズ」としてギネスブックにも記載された「ソウ」のリー・ワネル監督。ホラー映画界をリードするブラハム・プロダクションとタグを組みました。リー・ワネル監督とブラハム・プロダクションは、「ソウ」「インシディアス」など数々の人気ホラー名作を送り出していることでも知られています。
主演は、「ハンドメイズ・テイル 侍女の物語」で注目を集めるエリザベス・モス。恋人からの異常な束縛に苦しむ主人公セシリア役を、緊迫感いっぱいに熱演しています。
製作費わずか700万ドルながらも、世界興行収入132億円を超えた本作。映画批評集積サイトのRotten Tomatoesでも、批評家支持率91%と高評価を得ています。
透明人間を恐ろしい存在にするためには、「透明人間についての作品ではなく、透明人間の被害者、彼が執拗につけまわす人物の視点で描く必要があったんだ」と語るリー・ワネル監督。あえて透明人間を主役しないことで、「見えない恐怖」を見事に演出しています。

【透明人間】あらすじ(ネタバレなし)
富豪で天才科学者の恋人エイドリアンから、執拗に束縛され苦しむセシリア。ある夜セシリアは、彼の家から脱出することに。ほどなくしてエイドリアンは自殺しますが、セシリアは彼が亡くなったことに疑いを抱きます。やがて、彼女のまわりで不思議な出来事が起きるように。セシリアの疑念は、エイドリアンがなんらかの方法で彼女に復讐しようとしている…という確信に変わっていきます。
【透明人間】ネタバレあらすじ・結末
映画「透明人間」の登場人物はこちら。
- セシリア(エリザベス・モス)…主人公。建築家。恋人エイドリアンから精神的虐待を受ける。
- エイドリアン(オリヴァー・ジャクソン=コーエン)…富豪で天才科学者。恋人のセシリアを必要以上に束縛。
- ジェームズ(オルディス・ホッジ)…セシリアの友人。サンフランシスコ警察の刑事。
- シドニー(ストーム・リード)…ジェームズの娘。
- エミリー(ハリエット・ダイアー)…セシリアの妹。
- トム(マイケル・ドーマン)…エイドリアンの弟。弁護士。
ここからは、映画「透明人間」のネタバレ内容と結末が含まれます。作品をまだご覧になっていない方、結末を知りたくない方はご注意ください
異常なまでの束縛から逃れるため、恋人エイドリアンのもとをこっそり去ったセシリア。友人ジェームズの家で居候しはじめるものの、エイドリアンの存在に怯える日々を過ごします。
そんな折、エイドリアンが自殺。しかも、エイドリアンが莫大な遺産をセシリアに残したことを、彼の弟で弁護士のトムから告げられます。
エイドリアンが亡くなって安心したセシリアでしたが、身の回りで奇妙なことが起こりはじめます。床の上に落ちたブランケットを取ろうとすると、まるで重りがのっているように動かなかったり、知らない間に抗うつ剤を摂取していて失神してしまったり。さらには、エイドリアンから逃げ出した時に落としたはずの薬瓶がシンク上に置かれていたり…。
やがてセシリアは、エイドリアンが自殺が偽装して、彼の研究分野であった透明になる方法を発見して彼女を苦しめているのだと確信します。しかし誰も彼女のことを信じてくれません。
レストランで、信じて欲しいと懸命に訴えるセシリアを妹のエイミーが信じかけたとき、テーブルのナイフが突然浮いてエミリーの喉を切ります。そしてナイフはセシリアの手に。
逮捕されたセシリアは、精神病院に隔離されてしまいます。そこで自分が妊娠していることを告げられるセシリア。
精神病院を訪れたトムは、セシリアが犯罪を犯したため、エイドリアンの遺産を相続できないと説明。そして彼は彼女にこう言います。「エイドリアンの子供の母親として関係を修復すれば全ては解決する」
部屋に戻ったセシリアは、「子供も私もあんたには自由にさせない」と言いながら、盗んだペンで自分の手首を刺します。次の瞬間、見えない何かが彼女の腕をつかみます。待っていたかのように冷たい笑みを浮かべたセシリアは、そこに人がいるかのようにペンで空中を何度も突き刺します。
透明になるためのスーツが破損し、黒いスーツの上半身が出現。駆けつけた警備員たちを次々に倒して透明人間は逃走。そのあとをセシリアが追いかけます。
ジェームズの娘シドニーとジェームズを襲った透明人間を、駆けつけたセシリアが射殺。スーツを着ていたのは、なんとエイドリアンの弟トム。
その後エイドリアンは、自宅の地下室で縛られた状態で見つかります。全てはトムの仕業だったとジェームズから聞かされたセシリアでしたが、エイドリアンへの疑いは消えません。
ジェームズの協力を得て、セシリアはエイドリアンに会いに行きます。真実を知りたいと懇願するセシリアに、全ては弟が仕組んだことだと主張するエイドリアン。セシリアはバスルームに行くため席を離れます。一方、食卓で彼女を待つエイドリアンの手が勝手に動き、ナイフで自分の喉を掻き切ります。
床に倒れ苦しみながら死んでいくエイドリアン。バスルームから出てきたセシリアは、大声で叫びながらエイドリアンのもとに駆け寄ります。その光景を終始録画する防犯カメラ。その後、カメラの死角に移動したセシリアは、薄い笑みを浮かべながらエイドリアンにこう言います。「サプライズ」。
現場に駆けつけたジェームズは、セシリアが手に提げたバッグの中に黒いスーツが入っていることに気づきます。しかし彼は、自殺だったと主張するセシリアに同意した様子。そして2人は帰路につきます。

【透明人間】犯人はだれ?ラストも考察
ここからも、映画「透明人間」のネタバレ内容と結末が含まれます。作品をまだご覧になっていない方、結末を知りたくない方はご注意ください
本当の犯人はどちら?
精神病院でセシリアを襲った透明人間の正体は、エイドリアンの弟のトムでした。となると、セシリアを苦しめていたのは実はトムだったのか、それともエイドリアンだったのかが謎となります。
トムが実行犯であることは明らかです。エイドリアンが自殺したとセシリアを説得したのも、エイドリアンを地下に縛ったのもトムがしたことです。
地下でエイドリアンを発見した警察も、エイドリアンがトムの犠牲者であったという結論を下します。しかしセシリアは納得しません。全てはエイドリアンの仕組んだことであると断言。
セシリアの言うとおり、全てはエイドリアンが計画した罠だったと考えて自然でしょう。エイドリアンは非常に優れた知能を持っていました。セシリアが彼から逃げることを計画しているのもはじめから知っていて、計画を立てていたのでしょう。実際、セシリアが避妊ピルを服用していたのにも気づき、他の薬と入れ替えていました。
トムもエイドリアンから巧みに洗脳されて操られていました。トムもセシリアに「兄は人の心を操ることの天才だった」と言っています。
エイドリアンは「全てを完璧に思いどおりにする人だった」のです。
「サプライズ」と「ナイフ」が意味すること
生き絶えるエイドリアンにセシリアが言った「サプライズ」。この言葉は、本作で重要なポイントの1つとなります。
はじめに「サプライズ」という言葉が出てきたのは、作品の中盤あたり。セシリアが屋根裏で見つけたエイドリアンの携帯電話に「サプライズ」というメッセージが届きます。その後も、セシリアが逮捕され精神病院に入れられた時、もうろうとする意識の中で彼女は「サプライズ」という声を聞きます。
実は、エンディングで取り乱したセシリアにエイドリアンは「サプライズ」という言葉を口にしています。このことから、携帯電話に「サプライズ」というメッセージを送ったのも、エミリーを殺して精神病院までセシリアについてきた透明人間も、トムではなくエイドリアンだったのがわかります。
そしてラストは、全てをコントロールしていると思っていたエイドリアンにセシリアからの「サプライズ」が待っていました。
また、携帯電話と一緒にセシリアが見つけた「ナイフ」もポイントとなります。ナイフは証拠品のようにプラスチックの袋に入れられ、携帯電話のそばに置かれていました。
これは、この後だれかがナイフで殺されることを示唆しています。結果、妹のエミリーがナイフで首を切られ殺されました。またナイフは、エイドリアンが殺された時にも使用されました。
「サプライズ」という言葉と「ナイフ」が本作の伏線となっていて、エンディングのシーンで全て回収されたことになります。

ラストの意味は?
エンディングでセシリアは、盗聴器をつけてエイドリアンの家を訪れます。外に停めた車の中で、ジェームズが音声を聞いています。
セシリアはエイドリアンに、本当の犯人は自分であることを認めるよう迫ります。しかし、おそらくエイドリアンはセシリアが盗聴器をつけているのに気づいていて、自分が犯人であるとは認めようとしません。
そこでセシリアは、バスルームに行くため席を離れます。食卓に一人で座るエイドリアンは、ナイフを手に取り自分の喉を切ります。防犯カメラに映ったその光景からは、エイドリアンが自殺したのは明らかです。
作品では描かれていませんが、セシリアが透明人間となり、自殺に見せかけてエイドリアンを殺したと考えていいでしょう。しかも、妹エイミーが殺されたのと同じ方法で。セシリアは、エイドリアンの仕掛けを逆手にとって見事に復讐を果たしたのでした。
エイドリアンがセシリアを家へ迎え入れた時のこと。「寿司かステーキかパスタか」と食べたいものをエイドリアンから聞かれたセシリアは、ステーキを選びます。ステーキであれば、肉を切るためのナイフが必然的にテーブルに置かれることをセシリアは想定したのです。
さらに、エイドリアンの家を出る時、セシリアは大きな黒いカバンを手に提げています。しかし彼の家に着いた時の彼女は、手に何も持っていませんでした。
セシリアがカバンの中に入れていたのは、少し前に彼女がエイドリアンの家へ行った時、クローゼットに隠しておいた透明になれるスーツの予備です。クローゼットにスーツを隠して、復讐できる機会を待っていたのでしょう。
ちなみに、セシリアは仕事の面接で、フランスに住んでいたころお金がなく、クローゼットで寝ていたことについて話します。面接官は「クローゼットは貴重だよね」と返します。クローゼットの大切さを一番よく知っていたのは、セシリアであることは確かですね。

まとめ
映画「透明人間」のネタバレあらすじや考察についてご紹介しました。
本作を手がけたリー・ワネル監督は「自分が意図したものを観客に伝えることはしません。『これが正しい答えだよ』と言ってその人なりの見方を台無しにしたくないんです。実際は、正しい答えなんてないんだよ。」と語っています。
見えない部分や明らかにされていないところがあるからこそ、観客の想像力をかきたて、本作では恐怖をも助長させているような気がしますね。そこに映画の面白さを感じます。
映画「透明人間」は、現在(2021年4月29日時点)Amazonプライムビデオでご視聴いただけます。ぜひご覧になってみてくださいね。
最後まで読んでくださりありがとうございます。